政府、原子力規制委員会に、「使用済み核燃料再処理事業の廃止に関する申し入れ」を提出します

政府、原子力規制委員会に、「使用済み核燃料再処理事業の廃止に関する申し入れ」を提出します。

北海道の市民団体の呼びかけに連動し、横須賀特有の課題を赤字部分で加えたものです。7月18日経産省に申し入れの予定です。

 

2014年 7月 2日

内閣総理大臣、経済産業大臣、環境大臣、原子力規制委員会委員長殿

団体名 神奈川ネットワーク運動・横須賀

代表  瀧川君枝

住所  〒238-0011 神奈川県横須賀市米が浜通1-3

TEL 046-823-1211   FAX   同左

 

         使用済み核燃料再処理事業の廃止に関する申し入れ

 

福島第一原発事故は、広大な土地を汚染し、15万人もの人々から住み処を奪い、事故現場は、高濃度の汚染水の製造工場の観を呈している。メルトダウンした核燃料は、回収不可能という恐れさえ指摘されている。

わが国の原子力政策は、最悪の公害産業である原子力産業を、公害規制法から全面的に適用を除外し、「炉型の戦略は軽水炉から高速増殖炉へを原則とする」〈注①〉などと誇大妄想的なスローガンの下に、核燃料サイクル構想を推し進めてきた。

高速増殖炉もんじゅでは事故が多発、点検漏れ等による無期使用停止となった。プルトニウムとウランの混合酸化物(MOX)燃料を100%使う大間原子力発電所(電源開発)は、現在建設中であるが、商業炉として世界に例がなく、安全性には大きな問題を抱えており、核燃料サイクル構想は完全に破綻している。

再処理事業は、使用済み燃料を化学処理し、高レベル放射性物質を危険度の高い液状で取り扱うものであって、一旦過酷事故が発生すれば、福島第一原発事故を遙かに上回る被害が予想される。そればかりか、再処理施設は「正常」操業において、大量の放射性物質を大気や海洋に排出する。原発一年分の放射性物質を1日で排出するなどの指摘を受けているところである。

日本原燃は、そのパンフレットにあるように、「拡散・希釈」の名の下に、大量の放射性廃棄物を自然界に放出廃棄している。気体廃棄物については、高さ150メートルの煙突から時速70キロで噴出排出したり、液体廃棄物については沖合3キロメートル先の放出管から時速20キロで噴出排水させる、などのことを行っている。自然環境にばらまいて、薄めてしまえばよいという考え自体が、放射性物質による環境汚染の防止という視点を欠き、異常と言うほか無いものである。 

海洋投棄については、深刻な被害の予想されることから国際法上、国内法上、行えないことになっている。しかし政府は、陸上施設から海洋に放出することは、禁じられている海洋投棄には当たらないとして、濃度規制も無く容認している。船で3キロメートル沖合に運んで捨てれば違法で、パイプラインで運んで捨てれば適法という理屈は、脱法行為と評価すべき考えであり、悪質な公害企業的発想である。

このような再処理事業が実施されるに至ったのは、放射性物質が公害規制法から全面的に適用を除外されてきたからである。原子力産業は公害法の規制を受けることなく、原子力基本法以下の原子力産業推進法の体系によって、国策として異常な膨張を遂げてきたものである。この暴走を止めなければ、取り返しのつかない汚染拡大の結果を招く。

既に、フランスのラ・アーグやイギリスのセラフィールドの再処理工場によって、周囲の環境が汚染され、住民や周辺国から閉鎖を求める要求が続いている。

 

六カ所再処理工場の操業に伴う放射能汚染について具体的に述べれば、豊かな漁場である三陸の海に深刻な被害が予想されている。そのため、岩手県内からは、漁業、消費者団体関係者をはじめとして、海洋汚染を規制する法律の制定を求める取り組みが行われ、「放射能海洋放出規制法(仮称)」の制定を求める請願について、県内35市町村中、34市町村が採択している。

福島第一原発事故を契機に、環境基本法が改正され、放射性物質は公害物質として扱われることになった。また、大気汚染防止法と水質汚濁防止法についても、放射性物質の適用除外規定は削除された。岩手県内からの要望は、今や、政府が法律上の義務として応えなければならないものとなった。

まず、政府の義務として、環境基本法上の環境基準を定めなければならない。(同法16条1項)。また、環境基本法21条を遵守し、大気汚染については、政令でばい煙物質の指定を行い、環境省令を整備して排出基準を定めなければならず(大気汚染防止法2条、3条)、水質汚濁については、政令で有害物質として指定し、環境省令を整備して排水基準を定めなければならないものである。(水質汚濁防止法2条、3条)。

放射性物質の公害規制に当たっては、放射性物質の性質上、それが、一旦環境中に排出されれば、自然界を循環移動し人間に被害を与えるものであるから、地域や水域によって差があるべきものではない。従って、排出・排水基準は地域・施設の別なく一律に定められるべきものである。

放射性物質について、環境基本法の「維持されることが望ましい基準」である環境基準に相当するのは、原子力委員会が、実用原子炉について定量化して定めた線量管理目標値年50マイクロシーベルトであり、規制基準に相当するのは、法律上の公衆被曝線量限度の年1ミリシーベルトである。これらの数値をベクレル表示で客観的に定めるべきものである。

以上から考えて、使用済み核燃料の再処理は、日常的に汚染を容認するような、極端に緩い基準を設定しない限り、成り立たないものである。このようなダブルスタンダードは公害規制法を公害容認法にしてしまうものであり許されない。

政府は、これらの環境基本法や、その実施法である大気汚染防止法、水質汚濁防止法の定める、法律上の義務に従って、所要の政令、省令を整備するとともに、公害規制と相容れない再処理事業については廃止すべきものである。

以上、これまで、このような有害無益な事業を推し進めてきた原子力政策に強く抗議する。福島第1原子力発電所で使用された核燃料を製造し、大間原発で使用予定のフルMOX燃料の設計ならびにフランスMEROX社に製造委託をしている核燃料加工工場ニュークリアフュエルジャパン(GNF-j)がある横須賀の住民として、使用済み核燃料再処理事業を全面的に廃止することを申し入れる。

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