英空母クイーン・エリザベス

8月31日、市民団体と共同して以下の要請書を上地横須賀市長宛に提出しました。

 

要請書

英空母「クイーン・エリザベス」の米海軍横須賀基地寄港に関して、懸念を表明するよう求めます。

イギリス海軍の空母「クイーン・エリザベス」が米海軍横須賀基地に入港しようとしています。

「クイーン・エリザベス」空母打撃群は、今年の5月22日(日本時間23日)、イギリス・ポーツマスを出港。7ヶ月の長期航海で「同盟国と70以上の演習や作戦が予定されて」(朝日デジタル、2021.5.23)います。

横須賀基地入港直前には、沖縄南方で、米国、オランダ両軍と、自衛隊との4カ国の共同訓練を実施し、各紙は「中国をけん制する狙い」と報じました。

共同訓練は、海自護衛艦「いせ」に「クイーン・エリザベス」のヘリや、米軍のオスプレイが着たり、空自のF15と米海兵隊のF35Bが戦闘訓練を展開したりする、安保法制後の「集団的自衛権の行使」を前提とするような訓練内容でした。

中国の海洋進出に対する懸念が、抑止力一辺倒の多国籍軍による軍事的な包囲網となって具体化することは、対中対立を抜き差しならぬ時点まで押し上げることにもつながりかねません。求められているのは、ミドルパワーが持つ多様性を活かした多国籍外交であって、軍事的な対抗ではありません。基地を抱える横須賀市にも、同じように冷静な対処が求められています。

この意味で、横須賀市が「横須賀母港以外の米英の空母寄港が続くことから、国に対して説明を求めたい」(神奈川、2021.8.27)と述べたことに、私たちは注目します。原子力空母「カールビンソン」の突然の寄港もあってのことでしょうが、市民も納得できる十分な説明を、政府から引き出して頂きたいと思います。

 

英空母「クイーン・エリザベス」がなぜ在日米海軍基地に入港できるのかについて、2020年12月6日の日本経済新聞は次のように報じています。

「英軍は、朝鮮戦争(1950~53年)の国連決議に基づき定められた国連軍地位協定により横須賀(神奈川)、佐世保)長崎)、ホワイトビーチ(沖縄)などの在日米海軍施設・区域で補給を受けられる」

たしかに国連軍地位協定5条の2は、日本政府の同意があれば、在日米軍基地の使用を「国連軍」に認めています。しかし、同協定に関する「公式議事録」は、第5条の国連軍の在日米軍基地の使用に関して、「朝鮮における国際連合の軍隊に対して十分な兵たん上の援助(logistic support)を与えるため必要な最少限度に限るもの」とし、在日米軍基地の国連軍の使用は限定的な使用であることが確認されています。

なにより重大なことは、現在、朝鮮戦争は停戦中という事実です。にもかかわらず、国連地位協定を根拠に英軍の空母が入港するのであれば、国連軍地位協定と、今回の一連のオペレーションについて、日本政府からはなんらかの説明があってしかるべきです。

 

今回の「クイーン・エリザベス」の横須賀入港に関しては、次のような報道もありました。

2018年イギリス海軍のドック型揚陸艦「アルビオン」が米海軍横須賀基地に入港した際、「米軍基地内のドックで整備を行い、日本が寄港地として極めて有用であることを確認する機会となった。この時の経験が、今回の空母打撃群の長期派遣決断の下地にある」(日経、2020.12.9)。

横須賀基地の使われ方に、日々細心の注意を払う必要があることを、この記事は教えています。たとえ横須賀市に基地使用に関する決定権はなくても、その使用が、次のさらに拡大された使用に繋がらないかを警戒することは、横須賀市基地行政の基本的な仕事です。

まさに今回の英空母の入港は、無限定な使用による横須賀基地の機能拡大であり、「可能なかぎりの基地返還」を掲げる横須賀市の基本政策に逆行するできごとです。

 

「クイーン・エリザベス」がコロナ感染拡大を理由に、韓国への寄港を拒否されたもいう報道にも、注目しない訳にはいきません。

「韓国の国防省はイギリスの空母『クイーン・エリザベス』について、予定されていた釜山への入港を見送り、近海での合同訓練のみを行うと発表しました。空母打撃群の中で新型コロナウイルスの感染者が出ていることなどを考慮したとしています」(日本テレビNEWS242021.8.26)

「クイーン・エリザベス」艦内で、100人規模のクラスターが発生したことも報道されました。

横須賀市内だけでなく、横須賀基地内でも感染が急増している現状で、コロナ感染を理由に、他国から入港を拒否された空母を、横須賀市が受け入れていいはずがありません。

 

以上の観点から、入港直前ではありますが、私たちは以下の要望を提出します。文書による回答を求めます。

①国連軍地位協定と「クイーン・エリザベス」の入港につあて、関係条文の解釈も含めて、日本政府に説明を求めてください。

②多国籍軍による米軍基地の使用は、基地機能の拡大につながり、容認できないと表明してください。

③イージス艦の増艦もふくめて、横須賀基地の使用の活発化が進行しています。あらためて、可能な限りの返還を宣言し、基地機能の拡大についての懸念を表明してください。

④コロナ感染対策上、「クイーン・エリザベス」の入港は好ましくないと表明してください。

以上

神奈川平和運動センター/三浦半島地区労センター/厚木基地爆音防止期成同盟/原子力空母に反対し基地のない神奈川をめざす県央共闘会議/神奈川ネットワーク運動・横須賀/原子力空母の横須賀母港問題を考える市民の会/すべての基地に「NO」を・ファイト神奈川/相模補給廠監視団/厚木基地を考える会/ヨコスカ平和船団/非核市民宣言運動・ヨコスカ

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